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古事記現代語訳

古事記現代語訳(55)雄略天皇④一言主大神

ある時、雄略天皇は葛城山にお登りになりました。

その折、お供の人々には、みな赤い紐を付けた青摺(あおずり)の装束を賜い、揃って身に着けていました。

ところが、ふと遠くの山の尾根を見やると、そこにも立派な行列があり、従者たちも同じく赤い紐の青摺の衣をまとい、まるで天皇のご行列と寸分違わぬ姿で進んでいるのが見えました。

天皇は怪しんで人を遣わし、声をかけさせました。

「この日本の国には、私を除いて君主はないはずだ。それなのに我らと同じ姿で従者を率いるとは、いったい何者か?」

すると向こうからも、まったく同じ言葉を返してきました。

天皇は激しくお怒りになり、弓に矢をつがえました。

お供の者たちも皆矢を番えます。

すると、相手方もまた矢を構えて応じました。

その緊迫した中、天皇は声を放たれました。

「よい、それならば互いに名を名乗り合い、名乗った上で矢を放とう!」

すると向こうから声が返りました。
「私が先に答えよう。私は悪しきことにも一言、善きことにも一言で示す神、葛城の一言主大神(ひとことぬしのおおかみ)である」

これを聞いた雄略天皇は、驚き恐れ、すぐに矢を収めて拝し申されました。

「恐れ多いことです。まさか大神が、御姿を現されるとは思いもよりませんでした」

そして大刀や弓矢をはじめ、従者たちが着ていた青摺の衣まですべて脱がせて献じ、伏し拝みました。

一言主大神は大いに喜び、手を打ってその贈り物をお受けになりました。

その後、雄略天皇が山を下られる際には、一言主大神みずから山の麓に至り、はるばる長谷(はつせ)の山口までお見送りになったと伝えられています。