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古事記現代語訳

古事記現代語訳(38)秋山之下氷壮夫と春山之霞壮夫

伊豆志大神(いずしのおおかみ)のもとにお生まれになった娘神、伊豆志袁登売神(いずしおとめのかみ)は、その美しさゆえに、多くの神々から「自分のお嫁に」との声がありました。

しかし乙女は誰のもとへも行こうとはせず、求婚はすべて退けられました。

そんな神たちの中に、秋山之下氷壮夫(あきやまのしたひおとこ)と、弟の春山之霞壮夫(はるやまのかすみおとこ)という兄弟の神がいました。

兄の下氷壮夫は弟に向かって、

「俺は伊豆志袁登売を嫁にもらおうと思ったが、どうしても無理だった。お前なら手に入れられるか?」

と尋ねました。

弟の霞壮夫は、

「それはたやすいことです」

と自信ありげに答えました。

すると兄は、

「もしお前がこの乙女を娶ることができたら、俺の着物をやろう。さらに身の丈ほどの大甕に酒を満たし、山や川の珍しいご馳走をことごとく揃えてもてなしてやろう。ただし失敗したなら、同じことをお前が私にするのだぞ」

と賭けを持ちかけました。

霞壮夫は快諾し、家に帰って母に相談しました。

すると母神は藤の蔓を用い、一夜のうちに衣、袴、靴下、靴までを作り、さらに弓矢も作って与えました。

霞壮夫がそれらを身にまとい、袁登売の家を訪ねると、衣も弓矢もすべて美しい藤の花に変わり、艶やかに咲き誇りました。

霞壮夫はその弓矢を乙女の厠の扉に掛けました。

乙女はそれを見つけ、不思議に思いながら持ち帰ろうとしました。

その時、霞壮夫は彼女の後を追って家に入り、ついに結婚し、一子をもうけました。

霞壮夫は兄に向かって、

「私は乙女を嫁にもらいました。だから、約束の通り着物とご馳走をください」

と告げましたが、下氷壮夫は嫉妬のあまり、約束を果たそうとはしませんでした。

これを聞いた母神は烈火のごとく怒り、

「私たちの掟は、神々の正しい行いに倣うもの。それなのに賤しき人々のように誓いを破るとは、決して許されません」

と下氷壮夫を厳しく咎めました。

母神は伊豆志川の河島で節のある竹を伐り、大きな目の粗い籠を編み、その中に河の石と塩を竹の葉に包んで入れ、竈に置いて呪いました。

「秋山之下氷壮夫のような嘘つきは、この竹の葉のように青くなって萎れよ。この塩のように満ちたり干上がったりしろ。この石のように沈め!」

その呪いによって下氷壮夫は八年間も、衰え萎れ、病に苦しみ続けました。

ついに涙ながらに母神へ詫びを入れると、母神は呪具を取り除き、ようやく彼の身は回復して、元の健康を取り戻したのでした。