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古事記現代語訳

古事記現代語訳(11)根之堅洲国(ねのかたすくに)での須佐之男命からの試練

大国主命は、母神のお言葉に従って、須佐之男命のお住まいになる根之堅洲国へ向かわれました。

そこへ出迎えにきたのが、須佐之男命の娘の須勢理比売(すせりひめ)でした。

比売は大国主命をご覧になると、「お父様、立派な神さまがいらっしゃいましたよ」と父に告げました。

須佐之男命は出てこられて、「これは葦原色許男命(あしはらしこをのみこと)だ」と言って迎え入れました。日本書紀では「葦原醜男」となっています。

しかし、娘が大国主命を慕ったのが気に入らなかったのか、試練を与えて困らせようと考えました。

その晩、大国主命を蛇の室に入れて寝させました。室の中には大蛇や小蛇がうようよと集まっていました。

ところが須勢理比売は、ひそかに領巾(ひれ)を大国主命に渡し、「もし蛇が襲ってきたら、この領巾を三度振って払いなさい」と教えました。

大国主命が言われたとおりにすると、蛇はひとりでに退き、安らかに夜を過ごすことができました。

翌晩は、ムカデと蜂の室に入れられましたが、比売がまた領巾を与えて同じように助けてくれました。

大国主命は無事に眠り、朝を迎えました。

次には、須佐之男命が鏑矢を草がぼうぼうと伸びた広い野原に射込み、「あの矢を拾って来い」と命じました。

大国主命が草を分けて入っていくと、須佐之男命は野に火を放ち、四方を炎で囲ませました。

逃げ場を失った大国主命が困っていると、一匹の鼠が現れ、「内はほらほら、外はすぶすぶ」と告げました。

そこで地面を踏み割ると穴が開き、大国主命はその中に身を隠しました。火が燃え過ぎるのを待つ間に、鼠は鏑矢をくわえて持ってきてくれました。

矢羽根は鼠の子に食べられてなくなっていましたが、矢は確かに残っていました。

須勢理比売は大国主命が焼け死んだと思い、葬具を持って泣きながら野を訪れました。

須佐之男命も今度こそ死んだだろうと見に来ました。

ところが大国主命は矢を手にして姿を現し、二人を驚かせました。

さらに須佐之男命は、大国主命を広間に呼び入れ、横になって「俺の頭のしらみを取れ」と命じました。

髪を分けると、中には無数のムカデがいました。

困る大国主命に、須勢理比売が椋の実と赤土を渡して助けます。大国主命は椋の実を噛み砕き、赤土を混ぜて吐き出し、ムカデを噛み砕いたように見せかけました。

須佐之男命は「これは感心だ」と思い、そのまま眠り込みました。

大国主命は、このままぐずぐずしていると危ないと考え、須佐之男命の長い髪を四方の垂木に結びつけ、戸口を巨大な大岩で塞ぎました。

そして須佐之男命の太刀・弓矢・立派な琴を奪い、須勢理比売を背負って逃げ出しました。

ところが琴が木に触れて大きな音を立て、須佐之男命は目を覚ましました。立ち上がろうとすると、髪が垂木に結ばれていたため、広間ごと倒れてしまいました。

その間に大国主命と須勢理比売は遠くへ逃げ延びました。

須佐之男命は怒り、黄泉比良坂まで追ってきて大声で呼びかけました。

「おい!小僧、その太刀と弓矢を使い、八十神どもを山の坂や川の瀬に追い伏せ討ち払え。そして国を治める神、大国主となり、須勢理比売を正妻として、宇迦能山の麓に大空高く宮殿を建てよ!」

大国主命はその命に従い、須佐之男命の武具で八十神を討ち払い、国を治め始めました。

須勢理比売は正妻となり、二人は宇迦能山の麓に宮を構えて共に暮らしました。

その後、八上比売が子を連れて訪ねてきましたが、正妻の須勢理比売を恐れ、子を木の股に挟んで去りました。

この子は木俣神と呼ばれます。

こうして大国主命は、四方を平定しながら、ますます国を広げていかれたのです。

奈良市の春日大社の末社である「夫婦大国社」は、大国主命と須勢理比売を祀る神社で、縁結びや夫婦円満のご利益があるとされています。そこの絵馬は須勢理比売の象徴である杓子の形です。